マインドフルネスの企業活用への適用の第3回目です。
前回までは、個人のストレス低減や生産性向上というところに焦点を当ててきました。今回は、チームワーク、組織づくりについてご紹介します。
マインドフルネスの主要なテーマの一つに、慈悲=おもいやり、があります。これは、物事を好き嫌いといった価値判断をせずに、あるがままに受け入れるという点においてコアとなる考え方なので、別建てで考えていきたいと思いますが、今回は、その日常的な活用についてご説明します。
思いやりを育てるにあたり、一つの具体的な訓練方法として、「思いやりの瞑想」があります。
思いやりの瞑想では、自分の中にある思いやりの気持ちを育て、それを他者に向けることにより、主観的な他者との関係性を見直し、自分の心に余裕を与えるものです。
そもそも思いやりの気持ちとは何でしょうか。自分の心にもあるものでしょうか。例えば、公園である親子が遊んでいると想像してみてください。お子さんは2~3歳くらいだとします。そして、お母さんが目を離した時に、そのお子さんが池の方に歩いて行ってしまい、池に落ちそうになったとします。この時、その子供が知り合いであろうがなかろうか、誰でもその子供を救いに行くでしょう。これは誰の心にもある思いやりの気持ちです。
私たちは、普段の生活では自分のなかにある思いやりの気持ちに気づくことは少ないかもしれません。思いやりの瞑想は、自分のなかにある普段気づかない思いやりの気持ちに気づき、それを育てていくことで、より広い範囲に自分の思いやりを向けていく練習です。
- 通常の瞑想のように、安定して座れる姿勢で座ります。目は差支えなければ閉じましょう。
- 自分に優しくしてくれ、自分が感謝の気持ちを持っている人をイメージします。そして、その人に対して、感謝の気持ちを伝え、その人が幸せで毎日を暮らしていけるよう、声をかけます。そのまま1分程度瞑想を続けます。
- その人のイメージを消し、家族や友人など、日ごろから親しくしている人を思い浮かべます。前と同じように、その人に暖かい気持ちを向けます。
- 次は自分自身に暖かい気持ちを向けます。自分自身も他のみんなと同じく一人の人間であり、周りの人びと愛されてよい人だということを念じます。(そのような気持ちになれない場合、最初はそれでも構いません)
- 次に、好きでも嫌いでもない知り合いを思い浮かべ、同じように暖かい気持ちを向けます。普段深くかかわっていない人かもしれませんが、その人も、自分と同じように苦しみを避け、幸せを願っている人だということに思いをはせます。
- そして、自分の苦手な人を思い浮かべます。最初は強い感情の伴わない人が好いかと思います。先と同じように、その人も、日々を一生懸命生き、周囲の人のためになって幸せな生活をしたいと願っている点で、自分と同じであることを想像します。
- 1~2分ほどで、目を開け、瞑想を終わります。(時間は厳密に決まっていないので適当で結構です)
慈悲の瞑想を行うことにより、他者に対して違った見方ができるようになったり、自分自身の固まった気持ちが緩んで自分自身が楽になったりすることもあります。
人間関係の対立はたびたび私たちの前に現れますが、ここで敵・自分という2項対立の関係に拘泥すると、その突破にものすごくエネルギーを使い、かつ、雰囲気は殺伐としがちです。ここではあえてそのような戦いをせず、相手も自分も同じ存在であるという枠組みを設定することにより、より暖かい雰囲気の中で、新しい視点からのコミュニケーションがとれるようなっていいきます。