マインドフルネスは瞑想を活用した心を整える訓練です。通常、瞑想というと以前ご紹介した座る瞑想を想像される方が多いかと思いますが、瞑想にもいろいろな種類があります。今回は、歩く瞑想についてご紹介します。歩く瞑想は、日常生活のいろいろな場面で使いやすい、応用の効く瞑想方法です。ぜひやり方を身につけて、日々の生活に生かしてください。
歩く瞑想の練習方法は以下の通りです。
- 瞑想に適した場所を選びます。まずは5~10mくらい直線で歩けるスペースがあれば良いでしょう。室内でも室外でも構いません。
- まず両足をそろえて立ち、目をつぶります。そして、足の裏が地面と接している感覚に意識を向け、自分の体の重さを感じましょう。この状態で5~10呼吸程度の時間を持ちます。厳密に数える必要はありません。これより長くても短くても構いません。
- それから、目を開けて、ゆっくりと歩きだします。歩き始めは、足の裏の感覚に意識を向けていきます。座る瞑想(呼吸に意識を向ける瞑想)の時と同じように、何かいろいろな思いが浮かんだら、その思いを追い払う必要は無く、ただ足の裏に意識を戻していきます。いっとき歩いて気がそれたら、またそれに気づき、足の裏の感覚に意識をもどしいます。
- そのままゆっくりと歩いていき、自分の決めた折り返し地点まできたら、折り返して、また来た道を戻り、スタート地点に戻ります。その後は、同じ道を往復します。
最初のうちは5~10分程度からやってみましょう。また、腕の位置は前でも後ろで構いません。まずは散歩するときに意識を足に向ける、というくらいの大雑把なところから始めるのでよいかと思います。
まずは、座る瞑想と同じように、注意を足に向ける練習と考えてください。
Oxford Mindfulness Centreのサイレントリトリート(1週間)では、45分おきに、座る瞑想と歩く瞑想を繰り返すプログラムになっています。そのようなプログラムになっている理由として、座る瞑想と比較した場合の、歩く瞑想の以下のような特徴によるものと考えられます。
- 座る瞑想に比べて、身体感覚に意識を向ける練習になります。頭の中が迷いや不安で乱れているとき、その思考の渦から距離を置くために身体感覚に意識を向けるのは一つの有効な方法になります(イライラしている時でも、暖かいお風呂に足を入れた瞬間は足の感覚に気を取られてイライラを一瞬忘れるはずです)。
- 日常生活に組み込むことができます。日常生活では、特に仕事中などは、座る瞑想のように目をつぶりじっとしているのが難しいことも多いと思います。歩く瞑想であれば、目を開けて歩く際に、身体感覚に意識を向ける練習であるので、場所を選ばずに行うことができます。応用として、列に並んで待たなければならない時(スーパーのレジなど)、足の裏に意識を向けることで注意力のトレーニングができるチャンスとなり、「待たされる」イライラから解放されやすくなります。
- 座る瞑想を長時間続ける場合、じっと座り続けるのは辛いという方もいらっしゃるかと思います。その点、歩く瞑想の場合、歩きながら体もほぐれるので、集中しやすくなることがあります(ただし、集中しようと意識すると却って集中しづらくなるので、このことは歩く瞑想中は忘れましょう)。
こういったことが歩く瞑想の基本です。
できれば、日々、歩く瞑想のための時間をとり、意識を体に向ける練習をしてみましょう。慣れてくると、通勤、通学、買い物といった日常生活の一部分で行えるようになってきます。
実は、上記にはもう一つ大事な要素が抜けているのですが、これについては、一度上記を試して感じていただいた後でのほうが理解がしやすいかと思いますので、機会を改めてご紹介したいと思います。